名古屋高等裁判所 平成7年(行コ)9号 判決 1996年10月08日
控訴人(原告) 近藤忠則 外一名
被控訴人(被告) 大口余野特定土地区画整理組合
主文
一 控訴人らの当審における請求をいずれも棄却する。
二 当審における訴訟費用は控訴人らの負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人ら
1 被控訴人が控訴人近藤忠則に対して別紙目録(1)「従前の土地」欄記載の各土地について平成七年六月六日付けでした各仮換地指定処分をいずれも取り消す。
2 被控訴人が控訴人近藤正明に対して別紙目録(2)「従前の土地」欄記載の各土地について平成七年六月六日付けでした各仮換地指定処分をいずれも取り消す。
3 当審における訴訟費用は被控訴人の負担とする。
(なお、控訴人らの原審における請求は、当審において、右のとおりの請求に交換的に変更され、被控訴人はこれに同意した。)
二 被控訴人
主文一、二項と同旨。
第二当事者の主張
以下のとおり付加訂正するほか、原判決「事実」欄第二の記載と同一であるから、これを引用する。
一 原判決四頁末行から同五頁五行目までを次のように改める。
「2(一) 被控訴人は、控訴人忠則に対し、別紙目録(1)「従前の土地」欄記載の各土地につき、平成七年六月六日付けで仮換地指定をした。
(二) 被控訴人は、控訴人正明に対し、別紙目録(2)「従前の土地」欄記載の各土地につき、平成七年六月六日付けで仮換地指定をした。」
二 原判決五頁九行目を「(1)不明朗な原図の修正、関係簿書の閲覧請求拒否」と改め、同六頁二行目「ため、一部の役員が役得を図る等の不公正が発生した」から九行目末までを削除し、同七行目の次に行を変えて以下のとおり付加する。
「控訴人らは、土地区画整理法八四条に基づき、平成元年七月ころから平成三年一月ころにかけて、被控訴人に対し、繰り返し仮換地台帳(各人ごとに従前地と仮換地を一覧表にしたもの)及び氏名入り全体図等の関係簿書の閲覧請求をしてきたが、被控訴人は当初は右簿書の閲覧を妨げないと回答していたものの、その後は右閲覧請求をすべて拒否した。
同法八四条は、「事業計画及び換地計画に関する図書その他政令で定める簿書」の閲覧権を認め、「その他政令で定める簿書」として同法施行令七三条四号は「施行区域内の宅地について権利を有する者の氏名及びその権利の内容を記載した簿書」が含まれることを明記している。
このような利害関係人の関係簿書の閲覧請求権は、仮換地指定の内容が全体として不公正なものでないかどうか等を地権者など利害関係人の立場から監視し得るために認められたもので、手続面から仮換地の公平さを担保するための重要な権利であり、かかる閲覧請求が不当に拒否されたような場合には、仮換地の指定の内容に不公正なものがあることを強く疑わせるものであり、それだけで仮換地指定手続に重大な瑕疵があるものとみなすべきであって、手続全体の違法をもたらすものである。」
三 原判決一二頁一一行目「一二〇街区八」を「一二〇街区七」に改め、同一三頁四行目から同九行目までを削除し、同一〇行目「<4>」を「<3>」に改める。
四 原判決一四頁四行目の次に行を変えて以下のとおり付加する。
「(三) 一部役員に対する不公正な仮換地(いわゆる役得換地)について
本件仮換地指定処分には以下のように役得換地が含まれているので、本件仮換地は、その全体が不公正で違法というべきである。
(1) 被控訴人の理事である近藤勇について
近藤勇の自宅のある従前地日高五―一など近接する七筆合計面積二八四九・〇八平方メートルに対して、仮換地一三街区四など五筆合計面積二七五〇平方メートルが与えられており、当該部分の換地交付率は九六・五二パーセントになる。また、近藤勇の第二種生産緑地を除く日高全体をみても、従前地四八五六・〇八平方メートルに対して、仮換地三九九四平方メートルが与えられていて、当該部分の換地交付率は八二・二二パーセントになる。右の如き換地交付率は、本件仮換地における平均減歩率が二五・五八パーセントであるのに照らすと、極めて高い。これは、換地規程に違反して、原位置換地の原則を逸脱し、飛び換地により、不当に自宅建付地又はその付近に土地を集約するものにほかならない。
また、従前地日高一一四など七筆合計面積一九九三平方メートルに対して、日高地区の第二種生産緑地である仮換地二一街区一〇六六平方メートルが与えられているところ、右従前地のうち畑は二筆合計三六六平方メートルに過ぎず、その余の一六二七平方メートルはすべて山林であるから、これは、耕作していなかった山林を従前地として、優良な第二種生産緑地を仮換地としているものといわざるを得ず、控訴人らにおいては優良な農地を従前地として提供したのに、必ずしも優良とはいえない仮換地四一街区を与えられたのに比して、著しく不公平である。
以上のように、近藤勇について、役得換地がなされている。
(2) 被控訴人の副理事長である近藤俊夫について
近藤俊夫の従前地二九筆に対して、仮換地は一六筆であり、しかも、右仮換地は、接続しているものを一箇所とすると、八箇所にまとめて与えられている。これは、一筆の従前地が分割されて仮換地された例も少なくない中で、不当に集約された仮換地といわねばならない。
そればかりか、右八箇所のうち六箇所が角地であり、しかも、角地への仮換地は、<1>区画整理区域外における近藤俊夫の所有地に飛び換地で付け地した仮換地一街区五、<2>従前地日高五七―三、同五八―二、同五九、同六〇の四筆合計面積四七五平方メートルに対して、五六パーセント増しの七四四平方メートルを与えられた仮換地一四街区二筆、<3>従前地中畠七〇は道路中心線から離れているため角地に換地される条件を満たさないのに、これに対して角地を与えた仮換地三八街区一〇など、いずれも換地規程に違反するものである。
さらに、従前地日高一六八など三筆の山林合計九〇八平方メートルに対して、日高地区の集合農地である仮換地二〇街区が与えられているが、これは、耕作していなかった山林を従前地として、優良な集合農地を仮換地としているものであって、近藤勇の場合と同様、著しく不公平な仮換地である。
以上のように、近藤俊夫についても、役得換地がなされている。」
五 原判決一四頁六行目から同一五頁末行までを削除し、同一六頁初行「四」を「二」に改め、同頁八行目の末尾に次のとおり追加し、同頁九行目から一一行目までを削除する。
「被控訴人においては、未だ換地計画(土地区画整理法八六条以下)を定めていないから、控訴人らの主張する簿書は「換地計画に関する図書」に該当しない。また、「権利を有する者の氏名及びその権利の内容」(所有権、借地権等)は、いわゆる組合員名簿のことであり、これについて控訴人らから閲覧を請求されたことはなく、拒否したこともない。」
六 原判決一八頁二行目「同3の(二)は争う」を「同3の(二)及び(三)は争う」に、同三行目「五」を「三」に各改め、同「(照応原則について)」を改行して独立の行とし、同二五頁四行目「一二〇街区八」を「一二〇街区七」に改め、同九行目から同二六頁六行目までを削除し、同七行目「(四)」を「(三)」に改める。
七 原判決二六頁一二行目の次に行を変えて以下のとおり付加する。
「(役得換地について)
(1) 近藤勇理事について
近藤勇の自宅敷地である従前地日高五―一及びその付近の従前地合計八筆(合計面積三一二三・〇八平方メートル)に、同人の他所の従前地日高一九九(面積六六平方メートル)を加えた従前地合計面積三一八九・〇八平方メートルに対応する仮換地は、一三街区四など五筆合計面積二八六九・五九平方メートルであり、その換地交付率は八九・九八パーセントになる。このように換地交付率が高いのは、被控訴人の換地規程一六条により、既存建付地については負担軽減が図られているからであり、また、他所の従前地を持ち込み充当したのは、建付地の減歩相当分を他の土地から補充しないと、建物移転除去の問題が生ずるからである。なお、近藤勇の字日高における従前地五八八三・〇八平方メートルに対応する仮換地は、四七三八・九一平方メートルであり、その換地交付率は八〇・五五パーセントとなるが、これも、右各従前地のうち一五〇六・〇八平方メートルが建付地であって、その部分につき負担軽減が図られているからである。
また、第二種生産緑地である仮換地二一街区に対応する従前地は、すべて畑か田であり、山林は含まれていない。
以上のように、近藤勇に対して役得換地はない。
(2) 近藤俊夫副理事長について
近藤俊夫の従前地は、一二筆で、仮換地は四筆であり、その妻近藤信子の従前地は一二筆で、仮換地は八筆であり、その他、長男近藤春雄の従前地等を合わせると、近藤俊夫及びその関係者(以下「近藤俊夫ら」という。)の従前地三二筆に対応する仮換地は一六筆で、その箇所数は一〇箇所であるが、これは役得換地にはあたらない。
また、換地規程七条には、角地へ換地を定める順位が定めてあり、近藤俊夫らの従前地の殆どは、同条所定の「従前の土地が道路中心線の交点を含むもの」、「道路中心線の交点から従前の土地までの距離が近いもの」に該当するものであったから、これに対応する仮換地として角地が七箇所となったものである。
さらに、近藤俊夫らの集合農地である仮換地二〇街区に対応する従前地は、中畠六などすべて畑であって、山林は含まれていない。
以上のように、近藤俊夫に対して役得換地はない。」
八 原判決二六頁末行「六 被告の主張に対する認否」を「四 被控訴人の主張(照応原則について)に対する認否」に、同二七頁四行目「一二〇街区八」を「一二〇街区七」に、同七行目「七 被告の主張に対する反論」を「五 被控訴人の主張(照応原則について)に対する反論」に改める。
第三証拠<省略>
理由
一 当裁判所は、控訴人の当審における請求は、いずれも失当であると判断する。その理由は、以下のとおり付加訂正するほか、原判決理由説示(原判決三一頁四行目から同五一頁七行目まで)と同一であるから、これを引用する。
1 原判決三二頁九、一〇行目「修正の合理性、妥当性が全く検討されずに一部の役員が役得を図るなどの不公正が生じたこと」を「右理事会において、仮換地図面案について、修正の合理性、妥当性が全く検討されなかったこと」に改める。
2 原判決三三頁六、七行目「同月三一日に仮換地指定がされたこと」を、「同月三一日に仮換地指定(以下「旧処分」という。)がなされたこと、しかし、平成三年三月二八日付けで、別紙目録(1)「従前の土地」欄記載の符号JないしMの各土地及び同目録(2)「従前の土地」欄記載の符号XないしZの各土地に対し、旧処分が取り消され、同日付けで、若干その内容を変更した新仮換地指定(以下「新処分」という。)がなされ、さらに、その後仮換地の対象地について確定測量がなされ、その面積が確定したことから、平成七年六月六日付けで、別紙目録(1)及び同目録(2)「従前の土地」欄記載の各土地全部に対し、右の旧処分(但し、右のとおり取り消された部分を除く。)あるいは新処分が取り消され、同日付けをもって、仮換地の面積を正確に是正した本件各仮換地指定がなされたこと」に改める。
3 原判決三三頁九行目から同三四頁三行目までを次のとおり改める。
「次に閲覧請求拒否について判断する。
土地区画整理法八四条は、施行者に対し、「規準、規約、定款又は施行規程並びに事業計画及び換地計画に関する図書その他政令で定める簿書」を主たる事務所に備え付けることを義務づけ、正当な理由がない限り、利害関係人からの閲覧請求を拒んではならないと規定し、政令で定める簿書として同法施行令七三条四号は「施行区域内の宅地について権利を有する者の氏名及び権利の内容を記載した簿書」を定めている。しかしながら、右図書あるいは簿書は、制限的に解すべきものであるから、控訴人らが主張する仮換地台帳(各人ごとに従前地と仮換地を一覧表にしたもの)や氏名入り全体図は、同法八四条一項の「換地計画に関する図書」には該当しないものと解すべきであり、また、同法施行令七三条四号の簿書は、権利を有する者の氏名と権利の内容を記載した簿書というに過ぎないから、被控訴人が主張するように組合員名簿のような簿書を指し、控訴人らが主張するような各人別仮換地台帳、氏名入り全体図の如き簿書まで含むものではないと解すべきである。したがって、本件においては、控訴人らから閲覧請求権のある図書、簿書の閲覧請求があったものということはできないし、閲覧請求の拒否を被控訴人がなしたとみることもできないところである。」
4 原判決三四頁六行目から同三六頁四行目までを次のとおり改める。
「証拠(甲一の一ないし三、乙二、三、乙九の一ないし一〇、乙一〇の一ないし一一、乙一一の一ないし五、乙一二の一ないし五、乙一三の一ないし三、乙七四、七八、八三、一六〇、一六二、一六四、一六六、原審証人近藤俊夫)によれば、本件特定土地区画整理事業においては、施工区の北東部に位置する字少々腰及び字宮西と、南西部に位置する字日高及び字中畠にそれぞれ集合農地区(集合農地、第二種生産緑地)を設ける計画であったこと、被控訴人の設立準備時期には、右集合農地区は、少々腰、宮西、日高、中畠と字名をもって表示されていたこと、その後、右集合農地区は、主として水田の用地とする北東部の字少々腰及び字宮西を少々腰・宮西地区とし、専ら畑の用地とする南西部の字日高及び字中畠を日高・中畠地区として、二箇所の地区に分けて表示されるようになり、昭和六二年八月ころ、被控訴人から権利者に対してなされた農業経営に関するアンケート調査においても、その調査用紙(乙九の四)には、希望する集合農地区の記入欄として、少々腰・宮西地区と、日高・中畠地区の二枠の欄のみが設けられていたこと、同年八月二〇日開催の理事会において準備された集合農地区換地申し出書用紙(乙九の七)には、北東部の少々腰・宮西地区を妙徳寺地区と、日高・中畠地区を日高地区と改めた表示記載がなされていたが、同年八月二五日に開催された理事会において、右妙徳寺地区を単に「少々腰地区」と修正することにし、結局、集合農地区は、北東部を「少々腰地区」と、南西部を「日高地区」と二箇所に分けて正式に表示することが決議されたこと、この表示について、権利者に対し、同年九月五日及び同年九月一一日の二度にわたって説明会が開かれ、右五日の説明会には控訴人忠則も、右一一日の説明会には控訴人正明も各出席したこと、しかして、被控訴人は、同年九月、権利者に対し、集合農地区換地指定の申出については、それ以前の調査とは関係なく、改めて正規に申出すべき旨を通知し、集合農地区換地(仮)申し出書用紙(乙一〇の八)には、希望すべき集合農地及び第二種生産緑地として、「少々腰地区」と「日高地区」のみを表示して記載したこと、なお、集合農地区換地の申出については、「少々腰地区」か、あるいは「日高地区」かを特定して申し出るものとし、地区内での具体的な位置まで申出することにはなっていないこと、控訴人らはいずれも、集合農地区換地(仮)申し出書用紙の希望欄に「日二」と記載して、日高地区の第二種生産緑地に対して換地を希望する旨の申出をしたところ、控訴人忠則については右申出の一部に対し、控訴人正明については右申出の全部に対し、「日高地区」に属する字中畠に位置する四一街区が仮換地指定されたこと、右四一街区は第二種生産緑地であること、以上の事実が認められ、右認定に反する証拠(甲五八、六六、控訴人忠則原審本人、控訴人正明原審本人)の該当部分は採用できない。
以上の事実からすると、本件特定土地区画整理事業においては、集合農地区は、主として水田の用地とする「少々腰地区」と、専ら畑の用地とする南西部の「日高地区」の二箇所とされたもので、字中畠は右の「日高地区」に含まれるものというほかはない。また、集合農地区換地の申出は、地区内の具体的な位置まで特定あるいは指定してすることのできるものではないから、控訴人らが日高地区の生産緑地を申し出たことに対し、被控訴人が字中畠に位置する四一街区に仮換地指定したのは、まさにその申出にしたがって仮換地指定したものというべきである。
したがって、控訴人らが日高地区の第二種生産緑地につき換地の申出をしたのに対し、被控訴人において右四一街区に仮換地指定したことをもって、違法とすることはできない。」
5 原判決三六頁一二行目から同三七頁八行目までを次のとおり改める。
「しかしながら、宮西地区なる集合農地区は存在せず、字宮西に対応する施工区北東部の集合農地区が「少々腰地区」に含まれることは、前記(引用し、かつ改めた原判決理由欄)二3で認定したとおりであり、また、証拠(乙二、三、一六〇)によれば、「少々腰地区」は一二〇、一一九、一〇六、一〇五及び一〇三街区で構成され、一二〇街区は第二種生産緑地であることが認められるから、控訴人忠則が宮西と表示して第二種生産緑地を申し出たことに対し、被控訴人が、これを少々腰地区の第二種生産緑地への申出であるとして、一二〇街区へ仮換地したことをもって、違法とすることも勿論できない。」
6 原判決三七頁一〇行目から同三八頁四行目までを次のとおり改める。
「(一) 控訴人らのうち、控訴人正明が、被控訴人の運営から排除されたことを認めるに足りる証拠はない。
また、証拠(甲三一、三二、甲三八の一ないし三、甲三九ないし四三、甲四四の一、二)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人の理事会では、理事の控訴人忠則に対し、同控訴人の理事会への対応等に関して、他の理事らから非難が集中し、平成元年一月ころ、控訴人忠則が高血圧症で長期にわたり休養と加療を要する旨の診断書を理事会に提出したのを機に、理事会は控訴人忠則を休職扱いにすることとし、以後控訴人忠則に対して、理事会開催の通知等をしなくなったこと、控訴人忠則は、同年一〇月ころ、理事会に対し、病気回復の旨と理事会出席の意向を伝えたが、理事会は、控訴人忠則には反省の姿勢がないとして、以後も控訴人忠則に対しては理事会開催の通知等をしなかったことが認められる。以上の事実によれば、理事会の控訴人らに対する対応には些か不相当な点もあったというべきであるが、これをもって直ちに本件仮換地指定処分全部が違法になるとまではいえない。
(二) さらに、証拠(甲三四ないし三七、四八、乙二六の一、二、乙二七の一、二、乙一四〇、一六六、原審証人近藤俊夫)によれば、旧仮換地指定処分に基づき、平成元年五月一日より従前地の使用収益が停止になったことから、被控訴人は同年六月一〇日及び同年九月一日ころ、仮換地地区内の道路予定地である控訴人らの従前地において、道路工事のため、控訴人らが仮換地指定後に作付けした農作物を、その了解なく除去したことが認められるが、これにより本件仮換地指定処分そのものが違法となるものではない。」
7 原判決四二頁六行目の次に行を変えて以下のとおり追加する。
「<4> 従前地宮西六四は、北側が幅員約四メートルの道路に、西側が幅員約二・四メートルの道路に面した奥行(南北)約二二メートル、間口(東西)約一九メートルの角地、同六五は、同六四の東側に隣接し、北側が幅員約四メートルの道路に面した奥行(南北)約二二メートル、間口(東西)約一八・七メートルの土地、従前地少々腰一三〇は、道路に面しない島地であって、西側約七〇メートル離れたところに、幅員約二・四メートルの道路があるに過ぎない土地、同一五九は、東側が幅員約二・四メートルの道路に面した奥行(東西)約八メートル、間口(南北)約一四・五メートルの不整形な比較的狭い土地であるのに対して、仮換地一二〇街区六は、生産緑地内で、南側が幅員六メートル、東側が幅員四メートルの道路の面する奥行(南北)約四五メートル、間口(東西)約二六・五メートルの一筆の土地に集約された角地であること。」
8 原判決四二頁一二、一三行目「日高地区の第二種生産緑地を」の下に「、また、従前地宮西六四・同六五、少々腰一三〇及び同一五九に対する換地として少々腰地区の第二種生産緑地を」を、同四三頁初行「日高地区に」の下に「、また、一二〇街区は少々腰地区に」を、同四行目「甲第二七号証によれば」の下に「、平成五年一一月二七日ころにおいては」を追加し、同七行目「<3>」を「<2>」に、同一一行目「<4>」を「<3>」に改め、同四四頁三行目の次に行を変えて「<4> 一二〇街区六は、ほぼ整形であること。」を追加する。
9 原判決四四頁四行目「右<1>ないし<3>」を「<1>ないし<4>」に改め、同五、六行目「確保されており」の下に「、また、仮換地一二〇街区六は、その形状等において不良とはいえず」を、同四五頁初行「理由で」の下に「、また、一二〇街区への換地は、より遠方に飛び換地され、しかも整形でない土地への換地であって、農作業上不便であるとの理由で」を、同三行目「特に悪いものではないこと」の下に、「、そして、一二〇街区六の土地の形状等が不良とはいえないこと」を追加する。
10 原判決四八頁八行目の次に行を変えて以下のとおり追加し、同九行目から同四九頁一二行目までを削除する。
「(2) 従前地若ケ橋一五七・同二一七・同二二〇と仮換地一二〇街区七
従前地若ケ橋一五七は、西側の約二九メートル離れたところに幅員約二メートルの道路があるに過ぎない島地、同二一七及び同二二〇は、相互に隣接しており、二筆全体として鍵型を呈し、そのうち前者は、西側が幅員約二・一メートルの道路に面し、奥行(東西)約一九メートル、間口(南北)約一七・五メートルの土地、後者は、前者の南側に短辺(東西)約七・五メートル、長辺(南北)約一七メートルで接する土地であるのに対し、仮換地一二〇街区七は、生産緑地内で、南側が幅員六メートルの道路に面し、奥行(南北)約四五メートル、間口(東西)約一三メートルの整形な普通地であること、以上の事実については、控訴人正明が明らかに争わない。そして、甲第三号証によれば、控訴人正明は、右各従前地に対する換地として、いずれも少々腰地区の第二種生産緑地を希望していたことが認められる。
右の各事実を併せて考えると、右仮換地指定処分により、土地の利用価値は増進したものと認められるのであり、全体として充分照応しているというべきである。この点、控訴人正明は、仮換地一二〇街区七は右各従前地と比較して自宅からの距離が遠くなることを理由に照応していない旨主張するが、前認定のとおり同控訴人が第二種生産緑地を希望した以上、単に自宅から仮換地までの距離が遠くなるというだけの理由をもって、照応の原則に反するとは到底いえない。」
11 原判決五一頁七行目の次に行を変えて以下のとおり追加する。
「7 同3(三)について
(一) 近藤勇理事の仮換地
(1) 控訴人らは、近藤勇についての仮換地指定処分は、原位置換地の原則を逸脱し、飛び換地により、不当に自宅付近に土地を集約するものである旨主張する。
そこで検討するに、証拠(乙一一〇、一二六、乙一二七の一ないし一〇、乙一二八の一ないし五、乙一二九の一ないし三、乙一三五、一三六、一六三)によれば、近藤勇の建付地である従前地日高四―一(但し、一部)・同四―六・同五―一・同六、及びこれと一団を形成する従前地日高四―一(但し、建付地の残部)・同七・同八・同九、並びにその付近の従前地である日高一四の八番(合計面積三一二三・〇八平方メートル、うち建付地合計面積一五〇六・〇八平方メートル)に、これとは離れた従前地日高一九九(面積六六平方メートル)を加えた従前地合計面積三一八九・〇八平方メートルに対応する仮換地は、一三街区二・同四・同五・同六・同一二の五筆合計面積二八六九・五九平方メートル(うち建付地合計面積一四三〇・一二平方メートル)であって、その換地交付率は約八九パーセントであり、また、近藤勇の日高全体での第二種生産緑地を除く従前地五八八三・〇八平方メートルに対応する仮換地は四七三八・九一平方メートルであって、その換地交付率は八〇・五五パーセント(減歩率一九・四五パーセント)であるところ、本件事業計画上の全体の平均減歩率は二五・五六パーセントであるから、なるほど、右換地交付率はいずれも平均に比べて高いといわざるを得ない。
しかしながら、右証拠のほか、乙第七、第一三〇号証によると、近藤勇の右建付地から離れた従前地で、飛び換地となるものは、日高一九九(面積六六平方メートル)一筆に過ぎない。建物の移転除却の問題を避けるため、建付地及びその付近に、仮換地をまとめるには、建付地減歩率相当分を他の土地から補充することとせざるを得ないから、右日高一九九の一筆程度の飛び換地があったからといって、全体が不公正な仮換地指定処分とみることはできない。更に、右建付地及びその付近一帯の換地交付率が高いのは、換地規程上、既存建付地については負担軽減が図られているからにほかならず、換地交付率が同人について右認定のようにやや高いのも、日高全体の従前地のうち負担軽減の対象となる右建付地の割合が同人については、約四分の一の高率を占めることによるものと認められる。
したがって、右仮換地指定処分をもって、原位置換地の原則を逸脱したとか、あるいは不当に自宅付近に土地を集約したものと認めることはできない。
(2) また、控訴人らは、近藤勇の仮換地二一街区に対応する従前地の多くが山林である旨主張するが、前掲各証拠によれば、右従前地はすべて畑又は田であり、山林は含まれていないものと認められる。
(3) その他、近藤勇が不当に優遇された仮換地を受けたとする事由は認め難く、ましてや、近藤勇に対する仮換地について、本件仮換地指定処分全体を違法とするような違法事由の存在を認めることはできない。
(二) 近藤俊夫副理事長の仮換地
(1) 控訴人らは、近藤俊夫についての仮換地指定処分は、著しく集約的で、しかも、換地規程に反して角地を仮換地とするものが多い旨主張する。
そこで、検討するに、証拠(乙一一三、一一六、一一九、一二二、一二五、一三一、乙一三二の一ないし一〇、乙一三三の一ないし七、乙一三四の一ないし一一)によれば、近藤俊夫らの従前地は三二筆であるのに対して、仮換地は、一六筆で、その箇所数は一〇箇所であること、また、そのうち角地は、従前地日高三〇―一など六筆に対する仮換地一四街区一三(以下「仮換地A」という。)、従前地中畠七〇など二筆に対する仮換地三八街区一〇(以下「仮換地B」という。)、従前地中畠四四に対する仮換地一街区五(以下「仮換地C」という。)、従前地権現邁志一五三に対する仮換地五六街区二(以下「仮換地D」という。)、従前地若ケ瀬二一四など二筆に対する仮換地一〇五街区八(以下「仮換地E」という。)、従前地日高二二―一など二筆に対する仮換地一七街区七(以下「仮換地F」という。)、従前地権現二氏五二―一に対する仮換地三一街区一(以下「仮換地G」という。)の七箇所であることが認められる。
しかしながら、近藤俊夫らの右のような仮換地を捉えて、直ちに、本件仮換地指定処分全体の中で、それが不当に集約的であるということはできない。そればかりか、乙第一三六号証及び弁論の全趣旨によれば、控訴人忠則については、従前地八筆に対して、仮換地は五筆で、その箇所数は三箇所であり、控訴人正明については、従前地一九筆に対して、仮換地は四筆で、その箇所数は四箇所であることが認められるから、これらと比較して、近藤俊夫の右仮換地をもって不当に集約的なものであるとまで認め得ない。
また、仮換地A、仮換地B、仮換地C及び仮換地Eは、従前地の全部又は一部が原位置換地ではなく、飛び換地によるものであることが認められるが、それには、従前地が集合農地区等に該当するため(仮換地A、仮換地B)、他の土地の従前の機能を確保するため(仮換地C)、仮換地指定先が集合農地区であるため(仮換地E)など、それぞれ一応合理的理由が窺われるものであり、しかも、仮換地AないしGが角地であることについては、いずれも換地規程に反するところはないというべきであるから、右角地への仮換地をもって、直ちに不当ということもできない。
(2) さらに、控訴人らは、近藤俊夫についての集合農地である仮換地二〇街区に対応する従前地は山林である旨主張するが、右各証拠によれば、右従前地はすべて畑であり、山林は含まれていないものと認められる。
(3) その他、近藤俊夫が不当に優遇された仮換地を受けたとする事由は認め難く、ましてや、近藤俊夫に対する仮換地について、本件仮換地全体を違法とするような違法事由の存在を認めることはできない。」
二 よって、控訴人らの当審における請求をいずれも棄却することとし、当審における訴訟費用について、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 水野祐一 岩田好二 山田貞夫)
目録(1)近藤忠則関係
従前の土地
仮換地
符号
所在地
地目
地積(m2)
符号
街区
仮地番
地積(m2)
A
丹羽郡大口町大字余野字日高96番
畑
231
A
41
5―1
478.50
B
丹羽郡大口町大字余野字日高101番
畑
347
C
丹羽郡大口町大字余野字日高133番
畑
466
B
21
10―2
458.48
D
丹羽郡大口町大字余野字日高134番
畑
228
C
21
10―1
95.20
D
41
5―2
100.32
J
丹羽郡大口町大字余野字宮西64番
畑
380
G
120
6
1,091.89
K
丹羽郡大口町大字余野字宮西65番
田
423
L
丹羽郡大口町大字余野字少々腰130番
田
446
M
丹羽郡大口町大字余野字少々腰159番
田
72
目録(2)近藤正明関係
従前の土地
仮換地
符号
所在地
地目
地積(m2)
符号
街区
仮地番
地積(m2)
H
丹羽郡大口町大字余野字中畠35番
畑
241
E
41
8
2,383.97
I
丹羽郡大口町大字余野字中畠79番
畑
439
J
丹羽郡大口町大字余野字中畠86番
畑
314
K
丹羽郡大口町大字余野字中畠92番
畑
320
L
丹羽郡大口町大字余野字権現西48番1
畑
72
M
丹羽郡大口町大字余野字権現西91番
畑
99
N
丹羽郡大口町大字余野字権現西94番
畑
82
O
丹羽郡大口町大字余野字権現西95番1
畑
115
P
丹羽郡大口町大字余野字権現西96番1
畑
400
Q
丹羽郡大口町大字余野字権現西110番1
畑
112
R
丹羽郡大口町大字余野字権現西110番2
畑
49
S
丹羽郡大口町大字余野字権現西119番2
畑
135
T
丹羽郡大口町大字余野字権現浦58番
畑
370
U
丹羽郡大口町大字余野字権現西50番
畑
178
F
29
5
150.05
X
丹羽郡大口町大字余野字若ケ橋157番
田
241
H
120
7
583.16
Y
丹羽郡大口町大字余野字若ケ橋217番
田
307
Z
丹羽郡大口町大字余野字若ケ橋220番
田
128